【第128号】「魂の殺人」

性暴力のことを「魂の殺人」というのだと最近の新聞で知った。書くだけで身の震える思いがする。

先日、ジャーナリストの伊藤詩織さんが被害を公開したことが報道された。沖縄でも、アメリカ映画界などの有名人も、日本国内でも、世界中で日常というほどに起きている暴力だ。また、今に始まったことではない。なぜか?

被害者はどんなときでも被害者でしかない。そして多くの被害者は、その被害を明らかにしない。

私は深志高校在学時代に、市内の映画館と帰宅途中で痴漢にあったことがある。それを友達には話しても親には言えなかった。なぜか?・・とにかく話せない、話しにくい、話題にするだけでも嫌なことなのだ。とにかく忘れたい。身内や同性からでさえ「一人でいくからだ、とか、そんな恰好をするからだ・・」などの発言の出ることが多い。そして、どうしても自分を責めてしまう。それは、だれしも、また時代が変わっても同様だ。

伊藤さんは2年たって、手記「Black Box」(文芸春秋)を書いた。「私がなぜ告発できたのか、読者はきっとその背景を知りたいはずだと思った」という。

救いを求めて駆け付けた病院の対応はひどく、事情を話すことすらできない。警察へ被害届を出せば、大勢の男性署員の前で事実を再現させられたという。

「これでは訴える人が増えるはずがない。医療関係者や捜査機関の人への教育が急務です」という。「性暴力に関する社会的、法的システムを、同時に変えなければいけない。そのためにはまず第一に、被害についてオープンに話せる社会にしたい」と。

今回をもちまして、1年間の担当を終えます。ありがとうございました。

筆者紹介 : 太田 正子