【第110号】思い出の深志入学・・・

50数年前の深志入学。思い返せば、エネルギ―溢れる時代だったけれど、何もかもが素朴だった。人間もシステムも。

長野県では、中学校の成績によるまったくの縦一列で受験校を決めた。松本地域では、私立高校の受験日まで同日だった。推薦入試などもなく、「不合格者」は定時制高校(それも夜間のみ)、私立高校の2次募集、浪人のいずれかの選択をすることになった。「落ちたらどうしよう・・」と怖かった。非情な制度だったと今も思う。

数人の前年受験者が同じ中学校から試験に臨んだ。入試の日は寒かった。入室を待っている廊下で、浪人組の一人が、どこからか座布団を集めてきて、配ってくれた。こんなことができる「先輩」に驚き、尊敬の念を抱いた。入学後も、浪人して入学した人の「おとな」の態度にしばしばまぶしいものを感じた。あの年齢の1歳の差は大きかった。

入学前に、教科書購入のために登校することがあった。大勢が列になって、階段に並んでいた。すると、マージャンを始めたグループがありびっくり。家庭麻雀には親しんでいたけれど、中学校では見かけない光景の始まりだった。

入学日の感動は「声」だった。3年生までが集まっての「校歌斉唱」。圧倒的な「男声」は初体験だった。大人の男の声があれだけ集まったのを初めてきいた。地響きのようだった。

筆者紹介 : 太田 正子