【第212号】金

 東京オリンピックが近づいてきた。コロナ禍における開催について物議を醸しているが、政府は何が何でも開催しようとしている。それはさておき、オリンピックと言えば、メダル競争が話題となる。金銀銅メダルである。メダルの数に興味はないが、金属としての金銀銅に興味を持った。金銀銅はあるが鉄はなぜないのか不思議に思う。人類の歴史を考えれば、鉄は必須である。そんなことを考えている中で、改めて金銀銅について調べてみた。
 まず、金から始めよう。金と言えばツタンカーメンの黄金のマスクを代表に様々な宝飾品が思い浮かぶ。権力や富の象徴として各地の遺跡から出土されている。最近では、中国で黄金のマスクが3000年前の遺跡から発見されたニュースもあった。
 金の産出国ランキングは、2020年のデータで中国、オーストラリア、ロシアとなっている。我々の世代からすると、南アフリカはどうなったの?と思うが、2007年に中国に1位の座を奪われ、2019年に12位となっている。中国やロシアの躍進はすさまじい。
 日本では、かつてマルコポーロによって「黄金の国ジパング」と称されたように金が豊富な時期があった。古くは平泉中尊寺に代表される東北地方の金があった。江戸時代、佐渡金山は世界有数の産出量があった。意外と知られていないのは北海道の金、今でも砂金採集のための観光地もある。近年、金の産出地は鹿児島にあるようだ。
 金は、通貨として重要な地位を占めてきたが、近年は集積回路や宇宙船に使用されている貴重な資源である。しかし、使えばなくなるのが鉱物資源。金も同様である。「都市鉱山」という言葉がある。日本の都市に眠る金の埋蔵量は世界の15%程度にあたるといわれている。SDGsの一環として重要視する必要がある。オリンピックについてとやかく考えるよりもよっぽど生産的だと思う。

筆者紹介:水野好清