【第43号】「アンネの日記」

東京都内の図書館などで、この2月以来『アンネの日記』や関連図書が300冊以上破られた事件があった。器物損壊などの疑いで、すでにひとりの男が逮捕されている。

この大量破損事件は、米国・中国・朝鮮などでも報道された。オランダ・アムステルダムの博物館「アンネ・フランクの家」では、「ショック。破損行為に関する詳細な事実を知りたい」と報道された。

私が高校2年生のとき、昭和41年度トンボ祭演劇部第34回公演が「アンネの日記」であった。事件後からこの台本を探していたが、我が家の物置からようやく探し出してきた。ガリ版刷りでワラ半紙に印刷された134頁の台本は、48年経った今も鮮明に文字が読める。

本のコピーなどは考えられなかったから、部員が分担して原紙に鉄筆で書いて謄写版で印刷し、ホッチキスで綴じたものだ。私が分担したのは8ページ分だった。

スタッフ、キャストのページがあり、発声練習の文字が並び、キャストの登場数(セリフの数)が一覧表になっている。15歳のアンネ・フランクは238、54歳の父オットーが136、43歳の母エディスが123、16歳のペーターが115だった。予定表は5月30日から9月のトンボ祭までだ。登場人物は全部で10人、役を演じた部員の人たちのことを思い出している。アンネを演じた先輩と、2年前に私の家でばったり出会ったこともある。

私は、このときにはスタッフを命じられ、小道具の担当となった。台本といっしょに私が作成した小道具一覧表もでてきた。こんなものを作ったことは忘れていた。幕・景・数・色その他・関係人物・置場所・脚本頁が、一覧表になっている。これらを用意するのがたいへんだったことは覚えている。

アンネ・フランクは、昭和4年(1929)6月22日生まれだから、生存していれば今年で85歳。今も元気な私の母より6歳下だ。

筆者紹介 : 小松 芳郎