【第48号】あの夏。空の記憶

西穂高岳・独標落雷遭難事故の悲しみに沈んだあの夏。47年前になる。11人が亡くなった空の記憶。事故に向き合った当時の2年生が卒業45年の踊り場に立った。

負傷した仲間。無事だった友。登山を取りやめた人。命を問い、友を思った同心円の円周上で「カミナリ学年」の約400人は、それぞれの時空を経て今が在る。

節目の事業に1年がかりで取り組んだ。慰霊碑の補修や一帯の整備、遺品類の展示保管ケースの新調、資料写真アルバム7冊の複製合本化、関連資料の整理などを進めた。命を学ぶ拠りどころになってほしい、との思いが響き合った結果である。

資料写真アルバムをまとめた『あの夏。空の記憶』のページを繰ってみた。山頂を目指す笑顔、被雷後のガラ場、救助活動。山岳遭難史上例のない悲劇をそのまま語り伝える。

恒例となった学校主催の慰霊祭で、参列した同期生に背中を押されて挨拶に立った。「ご遺族の深い思いに寄り添い、実りへの長い道のりを歩み行きたい」。独標への祈りを込め、還暦を過ぎた身の生き方を誓った。これまでも、これからも昭和42年8月1日を忘れない。

筆者紹介 : 伊藤 芳郎