深志同窓会の新しい会長に就任した井上保さんは、昭和36年卒の13回生。籠球部に所属した高校時代、長身の選手と伍してコートを駆け回った。「スピード感あふれるプレーヤーだった」と当時を知る先輩が振り返る。
選手としての光彩以上に、井上さんの存在感は卒業後に輝きを放つ。立教大学在学中、監督不在となった母校のコーチを任された。週末に帰郷しては蜻蛉ケ丘に足を運んだ。大学バスケットボールの練習メニューを参考にしてフォーメーションを徹底的に鍛えた。主将には毎週、練習内容を指示したはがきを送った。野球の猛練習を象徴する千本ノックならぬ「千本シュート」の伝説もこのころの特訓に由来する。
井上さんは後輩たちを2年連続でインターハイに導く。その熱血指導ぶりが、このほど刊行された創部70周年記念『松中・深志籠球部OB会史』に記されている。
「現役生のために何ができるか。縦のパイプをさらに太くし、若い人が活動に参加する同窓会にしたい」。新会長就任の弁が新聞に載っていた。パスを受けた伝統のボールをどう操るか。井上さんのインサイドワークとフットワークに、会員3万余の目が注がれる。