【第132号】江戸っ子の粋(いき)

年金手続きの年を迎え、これからの人生をどう生きようかなどと考えていたところ、知人から杉浦日向子著 『うつくしく、やさしく、おろかなり―私の惚れた「江戸」』を紹介された。

「三百年の江戸の太平が、都市部に暮らす長屋の住人にもたらした新しいライフスタイルは、「三ない主義」」

一つ、モノをできるだけ持たない。

二つ、出世しない。

三つ、悩まない。過ぎたことは忘れて悩まない。翌日に持ち越さない。常に前向きに、ポジティブにいきる。

「粋は低出力の美学」「無用の贅」など、江戸っ子の粋の本質が語られる。

そんな生き方も悪くないと思いつつ、江戸っ子の暮らし向きについつい引き込まれてしまった。

江戸は圧倒的な単身赴任者の多い男社会。これは、意外な感じもするが、武士も単身赴任、町人のほとんどは地方からの出稼ぎと説明されると納得。

そして、圧倒的な外食文化。それも屋台での立ち食い。寿司も天ぷらもファーストフード。時代劇などで想像していた庶民の暮らしとはかけ離れた世界が展開されている。

これまで、興味の外にあった江戸の庶民の暮らし。意外と面白い。というわけで、十返舎一九の『東海道中膝栗毛』を読もうと岩波文庫を取り寄せたところ、字が小さい。あきらめようかと思ったが、せっかく買ったので、頑張って読もうかと思っている。

筆者紹介 : 水野 好清