【第24号】永遠に思わん

遠ざかる音風景は、葬送行進曲の奏楽で始まる。「心むなしさの果て、哀しみの極みに堪えて」。時の赤羽誠校長が肩を重く垂れながら声を絞り出した。西穂・独標で落雷に遭って亡くなった11人の学校葬の記憶である。別れの式場となった松本市水汲の県営体育館は既にない。46年の歳月が流れている。

式次第は「穂高に逝きし若き御霊に捧ぐ」の合唱へと移る。「カミナリ学年」の召田真知子さんが歌詞を切々と朗読した。麗しく、ひび割れた心に染み入るような声だった。純白の指揮台に立った小柄な音楽教諭の指揮棒の動きに1,300人が声を合わせた。

夢を紡ぎ合い、学術の理想を語り明かした日々を、同級生は弔辞で振り返る。

「遠い世界に行っても心の中に生き続ける」「悲しみを無駄にしない。君の分まで頑張る」「おまえが果たせなかった夢を俺が必ず果たす」。誓いの断章はそののちの生き方の起点となった。

鎮魂の神髄に触れた難しい楽曲は「ああ思わん思わん/深志は深志は永遠(とわ)に思わん/われらはわれらは永遠に思わん」の言葉で終わる。

慰霊祭の日、母校図書館の自習室に展示されている慟哭の遺品類に手を合わせた。思いと祈りは何年たっても悲しみの同心円の上にある。

筆者紹介 : 伊藤 芳郎