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蜻蛉乙女(あきつおとめ)
深志同窓会

第9回 乙女の輪 心を求める旅路~深志から全国へ

 40回卒 北澤知奈美

皆様こんにちは。40回卒業の北澤知奈美と申します。私は、東京・吉祥寺に本拠を構える劇団前進座で、女優として活動しております。
 劇団前進座は、1931年5月創立、来る2016年には創立85周年を迎える老舗劇団です。1931年と言えば、9月に満州事変が勃発し、庶民の生活の中に戦時色が色濃く影を落とし始めた年です。その中で、厳格な世襲制により役者の間に大きな格差のあった、歌舞伎の世界から若い役者が飛び出して、「広汎な民衆の進歩的な要求に適合する演劇の創造」を理念に掲げて創立したのでした。歌舞伎もやれば、現代劇、ファミリーミュージカルなども上演する、そんな「演劇のアミューズメントパーク」ともいえる劇団に私が入座したのは、1988年に深志を卒業して、前進座附属養成所で1年間みっちり学んでの事でした。入座して2年たった1991年には、私自身が役者を志した原点ともいえる『さんしょう太夫』という作品で主役のあんじゅ役を頂き、芸術鑑賞会として母校の皆さんにご覧頂けた事は、本当に光栄な事でした。

前進座は、「芝居が観たい」という全国の皆様の声に応えて、津々浦々にまいります。時には災害地の要請にも応えてまいりました。雲仙普賢岳の噴火に苦しむ島原市や、新潟県中越地震の被災地、そして、2011年の東北大震災直後の東北、福島県下。私達が伺ったのは、仮設住宅すらもまだ準備されていず、多くの被災者が体育館などの過酷な条件下で過ごされていた6月でした。あのような大災害を目の当たりにした時、演劇などに一体何が出来るのかと、無力感に苛まれたものです。しかし、目を覆うばかりの惨状の中で力強く立ち上がろうとしている地元の皆さん、舞台上に展開する物語に目を輝かせて笑い、涙し、「来てくれて本当にありがとう」と喜んで下さった皆さんの姿に接し、私達出演者もあふれる熱い思いを抑える事が出来ませんでした。役者を続けていて本当に良かった・・・ほんの僅かでも人の力になれる、という喜びを実感したのでした。

震災以後、日本人本来の大きな美徳である、人を思いやり助け合う気運が高まっていますが、その一方で若年層による想像力を欠いたような悲しい事件も起こっています。演劇人として、一人でも多くの皆様に温かい心、豊かな心をお届けしていくのが私達の務めだと、心に定めながら活動しております。深志で学んだ探究心、あきらめないエネルギー・・・それらをフル活用して、これからも「心の栄養」をお届けしてまいりたいと思っております。
 各地を巡っておりますと、思わぬところで深志同窓の方にお会いする事がございます。全国どこに行っても同窓の方がいらっしゃる、「深志」の名が知られている、こんな高校はごくわずかだと思います。私も、全国の同窓の皆様、蜻蛉乙女の皆様のご活躍に勇気を頂きながら、自分の選んだ道を究めて参りたいと存じます。どうぞお見知りおき頂き、応援して頂けましたら有り難く存じます。

 


母校の舞台で『さんしょう太夫』あんじゅ役

母校の舞台で
『さんしょう太夫』あんじゅ役

楽屋風景 舞踊『雪祭五人三番叟』

楽屋風景
舞踊『雪祭五人三番叟』

 


 

五木寛之作『旅の終わりに』炭鉱のおばちゃん役も

五木寛之作『旅の終わりに』
炭鉱のおばちゃん役も

主演作 松本清張作『或る「小倉日記」伝』

主演作
松本清張作『或る「小倉日記」伝』

 


 

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プロフィール 北澤 知奈美 - 前進座