【第165号】日本最初の普選運動は、松本から

松本市中央図書館入口近くに「普選実現運動発祥の地記念像」がある。碑文に、日本の普通選挙(普選)運動は、全国に先駆けて松本ではじまったとある。平成7年(1995)1月に建てられた。4本の石の柱は、普通選挙実現を目指し情熱的に活動された先人の思いを表している。

当時の衆議院議員選挙法は、直接国税15円以上を納める男だけに選挙権が与えられていた。中村太八郎(東筑摩郡山形村大池出身)や木下尚江(松本城下天白町出身、松中2回)らは、明治30年(1897)7月、松本の緑町に「普通選挙期成同盟会」の看板をかかげ、「普通選挙を請願するの趣意」を発表した。これが、日本で最初の普選実現運動の宣言であった。東京の「普通選挙期成同盟会」創立は、松本より2年余も後の32年10月だった。

32年12月6日、普通選挙同盟会の第1回大会が松本神道公会所で開催され、第14議会に提出する請願書を議決した。「普通選挙請願書」が33年1月に衆議院に提出された。これが、わが国における普通選挙請願の最初である。

34年1月12日、普通選挙同盟会第2回大会が神道公会所で開催された。翌35年2月12日、第16回帝国議会にわが国最初の普通選挙法案が提出された。提出者は、降旗元太郎(東筑摩郡本郷村浅間、現松本市出身)ら4人の代議士だった。

大正14年(1925)2月21日、普選法案が提出され、2回の会期延長の末、3月26日に「納税資格全廃、有権者25歳以上の男子」の普選案が可決された。

図書館前の碑は、記念像建立委員会によって建てられたが、その会長が、昭和32年から松本市長を3期12年間勤めた降旗徳弥氏(松中37回、元深志同窓会長)である。私は、依頼されてこの碑文を書くことになった。元太郎の長男である徳弥氏は、なんどもその原稿を推敲された。

松本市の投票率は、県下ではかなり低いほうだが、この7月の参議院選挙の投票率は如何。注目している。

筆者紹介 : 小松 芳郎