【第223号】鉛筆を持たない子供たち

 小学校1年生を持つお母さんと話をする機会があった。1人一台タブレットの時代になり、これからどうなるのか心配していた。1年生では鉛筆を持って学習しているが、その後どういう学習が行われるのか心配だということだ。
 我々の世代も含め、学校での学びにおいて鉛筆と消しゴムは必須アイテムであった。GIGAスクール構想によって学校は大きく変わろうとしている。いずれは教科書がデジタル化され、カバンの中から教科書が消えタブレットやノートパソコンがカバンの中身になるという話もある。教員の側では古くから愛用されてきた黒板やホワイトボードに代わって電子黒板が主流になる時代が来るのだろう。
 学校にはおびただしい紙媒体が氾濫していて、ペーパーレスの実現を試みたこともあったが、教員の持つアナログ志向には勝てなかった。国はいろいろな場面でデジタル化を進めようとしている。キャッシュレス、マイナポイント数えればいっぱいある。そこには経済効果への期待が大きいのだろう。学校改革も文科省と経産省が一体化した大プロジェクトである。
 デジタル化により便利さは飛躍的に向上するのだろう。我々もその恩恵にあずかっているのは確かである。しかし、便利さの中で置き去りにされたもの、もっと言えば悪しき面を考えざるを得ない時がある。額に汗して働くこと、地道な努力。逆境に打ち勝つ精神力などなど。ただ与えられたものを良しとせず、その裏に潜むマイナス面も考える余裕が欲しいものだ。

筆者紹介:水野好清