【第208号】働き方改革

 大学を卒業し、最初に松本大学予備校に就職した。4月の1ヶ月の休みが1日であった。そのことを高校の恩師に話したところ、「当たり前だ。」と一蹴された。その後、上司と8時間労働について話した。「8時間労働は工場労働者を対象とするものであり、予備校については当てはまらない。」と言われた。労働基準法について詳しく理解していなかったこともあり、妙に納得した。
 大学生のころ、学業に費やす時間とその他の時間は明確に区分されていなかった。時には徹夜で予習をしなければならないこともあった。そう考えると、仕事に多くの時間を割くことはあまり苦にならなかった。仕事の中に余暇があり、多くの時間と多くの精力を仕事に注ぎ込んできた。そんなことを続け、それは最近まで続いた。
 考えてみれば、家事についてはどこまでが仕事でどこまでが自分の時間なのか判別ができない。農業を主体とした時代では、明るくなれば農作業を始め、日が落ちるまで続ける。サラリーマンを除けばそんな生活をしている人が多くいるのだろう。働き方改革が叫ばれる背景には、労働生産性の向上があるようだ。労働生産性について詳しいことはわからないが、短時間で労働効率をあげることが重要であるようだ。簡単に言えば、たらたら仕事をするなということか。
 働き方改革はいいことだと思う。これまでの社会の在り方を振り返り、人生の在り方を問い直す絶好の機会である。仕事至上主義を退け、仕事以外に実りある人生を送ることに重点を移すことはよいことだ。同時に実りある人生とはなにか考えるときがきた。

筆者紹介:水野好清