【第134号】期待されない新入職員

30数年前松本大学予備校に就職した。

当時、松本大学予備校は、本庄の地に校舎を新築し、河合塾と提携し2年目の年であった。

3月の半ばから仕事を始めることになり、3月中は倉庫整理や雑用をした。4月から現役生を対象とするコースの教務を担当することになった。驚いたことに、前任者からの引継ぎもなく、前年度に作成された資料を渡されそれを参考に仕事をするしかなかった。

後から分かったことではあるが、どうも採用の段階で私は不採用の予定であったようだが、紹介者(昨年亡くなったコバシュン)の取り成しで言わば無理やりの採用であった。

たぶん、そんな経緯もあり、あまり重要ではないポジションで仕事をいただいたというのが、私の仕事はじめであった。実を言うと、私としても予備校に興味があった訳ではなく、お互い様といったところである。

というわけで、期待されない新入職員は、誰から教えられることもなく、自分なりに考えて仕事をしていくしかなかった。4月スタート時点で40人ほどであった生徒は、9月には80人ほどになった。このあたりから期待される人材へと変化していったのではないかと思っている。

最近、「やらされる感」という言葉を耳にする。私の経験からすると「やらされる」というよりも「自分から作り出す」しかなかった仕事はじめであった。さらに言えば、それ以後「やらされる」という感覚はほとんどなく仕事をしてきた。

いろいろな意味で形ができてきた昨今の状況の中では、期待されない人材を採用する職場はほとんどないと思うが、「自分から作り出す」ことを心がけていきたいものである。

筆者紹介 : 水野 好清