【第98号】深志の学び

卒業した年の受験生は全国にざっと80万人。競争相手は現役生ではなく浪人生だった。大学紛争のうねりにのみ込まれて東大入試は中止。高いハードルの受験戦線を前に、母校の開放感と時代の閉塞感を味わった3年間だった。

中学生までの「おだてられ教育」から、深志に入っての「けなされ教育」「痛めつけられ教育」へ。入学を彩った桜花から1カ月。急に冷え込んだり、強風が吹き荒れたりする風薫る季節は、褒められて伸びてきた若葉たちへの試練だった。

現代国語の読み解き方について教科担任はこう説いた。単語の意味を正確に押さえて文の意味を考える。文と文の続き具合を明らかにして文脈をたどる。要点を把握しつつ段落を切り、構想を練る。趣旨をまとめて主題を考える…。

テーマに迫るアプローチは他の教科にも通じる。地理や日本史は笑い転げているうちに65分の授業時間が経過した。

「どうやって勉強したらいいか分からない」と頭を抱えたものだ。「君たちはやらなければならないことをやらないで何を言っているのかね」。卒業後も敬愛した恩師の弁である。教室が先生と生徒の本当の対話の場となり、そのやりとりを楽しむという理想には程遠かった。

筆者紹介 : 伊藤 芳郎

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