林 真理(深志27回)
厚生労働省・柏市協働事業かしわ地域若者サポートステーション総括コーディネーター
公認心理師、産業カウンセラー
尚学塾特別授業を担当することになってから、心理師の私が高校一年生に伝えられることは何だろうと自問した。
私自身の人生は成り行き任せでキャリアも迷走しているけれど、自分らしく生きてこられたとは思う。
困難な選択をする時に背中を押してくれたのは深志高校の3年間で学んだ「自治」の精神だった。そんなことを思い出し、これから進路選択をしていく生徒たちに「人生の旅に必要なもの」をテーマに「自己決定」について話すことにした。
まずはWHOのライフスキル10項目(意思決定、問題解決、創造的な思考、批判的な思考、効果的なコミュニケーション、人間関係のスキル、自己認識、共感性、感情への対処、ストレスへの対処)を取り上げた。その上で個人の尊厳や自律性を支える「自己決定」について掘り下げた。
自分のことは自分で決めるというのは単純だが結果を引きうける覚悟がいる。だからこそ頑張れるし、失敗しても次の一歩を踏み出せる。自己決定はモチベーションを高め、自分らしさの感覚を養う。自我を確立する青年期に欠かせないものを私は「深志の自治」から学んだのだと思う。
最後に精神分析家エーリッヒ・フロムの二通りの生き方を考えた。
一つは職業、財産、地位など「持っているもの」で自分を定義する “Having”、もう一つはありのままの存在を重視して自分自身を生きる “Being”である。世界中がネットワークでつながりSNSのいいね!を求める時代を生徒たちはどう生きるだろうか。
“Being”は抽象的でとらえどころがない。原稿を書きながら、ふと、クロのことを思った。深志高校27回生はクロに直接会えた最後の学年だ。晩年のクロは老いも病も受け入れあるがままを生きていた。(わたしには、そのように見えた。)
偏差値で自分を位置づけることがなかった時代、情報を得るのも大変で、AIの模範解答を参照することもなく、根拠のない自信や夢を持てた時代。何ものでもなかったあの頃を共に生き、それぞれに社会に出て様々な経験をしてきた今、「深志」は時を超えて我々をつないでいる。
実行委員の皆さん、そして同窓会会長の太田寛さんのご尽力により卒業50周年記念行事は懐かしく温かい余韻を残して幕を閉じた。その数日後急逝された太田さんのご冥福を祈り、心からの感謝を捧げたい。



