【第232号】これまでの30年とこれからの30年

太田光憲(44回)
NTTコミュニケーションズ株式会社

 今回卒業30周年ということで、尚学塾特別授業として次男と同じ高校2年生に55分お話しする機会をいただいた。平凡な私を多様性や職種の網羅性を重要視する小野くんが人選をしてくれた。小野くんありがとう。自分の子供の歳が今年度20、17、15になる。出来はともかく無事に育ってくれたこと、サポートしてくれた周囲、特に私の母には感謝しかない。母子家庭だった私はいろんな意味で貧乏な状況だった。

 まず、ここ30年の時代変化から学生に伝える。つい先日まで多くの国民が、日本は総中流だと信じてかつ思い込んでいた。現在中間層が減り分布は右と左による。若年層だけでなく高齢者の貧困が問題になり、社会全体で総中流とは真逆の格差社会になりつつある。

 現役世代には、貯蓄が少ない、賃金が増えないことに加え、税負担、保険料負担が増加しているため可処分所得が、減少している。加えて子育て世代には昔よりも重い教育費負担がのしかかる。結果、子どもを作ることが難しいと考える人が増えた。男性の育児休職についてはこれほど何年も言われながら取得する、できるのはごく一部である。核家族化が進み子育て環境は昔よりも劣化している。社会や企業も子育てに対して寛容ではなく、社会や地域全体で育てようという雰囲気は感じられない。少子化は止まらない。

 そんな中、コロナ禍の変化をチャンスと捉える流れもある。私の会社では、リモートワーク、フレックスタイム(コアタイムなし)を本格導入。今まで奥さんに任せていた洗濯や夕飯づくりが、出来るようになったし何より体の負担が減った。やる気さえあれば副業などもできるし、趣味である不動産株式投資にもっと時間をかけられる。37歳で始めたスキーは昨年、週5日スキーができる時もありシーズン滑走100日を達成。SNSに流された誰かの人真似ではなく、本当の自分らしさを考えるときなのかもしれない。

 様々なテクノロジーの進化はすさまじく、多くの非効率な人手の仕事をやらなくてよくなる。それは考え方を変えれば本来人がやるべきことを出来るようになるということである。これからは、自分らしい生き方を重視し実現していく人は比較的容易に人それぞれに輝く社会を実現できるようになると考える。すでに回答のある問題、仕事をやり続けてきた我々世代とは、次元の違う、課題設定すら難しい社会となっている。深志の在校生、卒業生の方々にはそうした時代をともにリードしていって欲しい。

私らしさとは?「大好きな信州、松本、自然の中を走るS660」